【労務管理】能力不足なので懲戒処分したい

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 【労務管理】能力不足なので懲戒処分したい
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中川:こんにちは。
社長:こんにちは。
   Aさんについて相談です。
中川:はい、なんでしょうか?
社長:Aさんは入社して1年経ちます。
   あまりに仕事ができません。
   困ったものです。
中川:試用期間中に能力不足を見抜けなかったのですか?
社長:少し不安でした。
   しかし、そのうち仕事になれたら大丈夫と思っていました。
   しかし、明らかに使えません。
中川:きちんと教育をしたのですか?
社長:普通の教育をしています。
中川:それでもダメなのですか?
社長:それで、周りにたいする示しもありますので、懲戒処分を
   したいのです。
中川:どのような理由で?
社長:能力不足により減給としたいと思います。
中川:就業規則に書いてありますか?
社長:それが見当たらないのです。
中川:それが普通です。
   能力不足で懲戒処分はできませんから、就業規則に書いてないの
   です。
社長:どうして書かないのですか?
中川:就業規則は服務規程に違反した場合のことが書かれています。
   能力不足は服務規程違反ではないでしょう?
   能力不足は個人の問題だから服務規程には書かないのです。
社長:そうはいっても、解雇の条文に能力不足の場合は解雇すると
   あります。
   本当は解雇したいところを減給処分にするのです。
   ある意味、暖かい扱いだと思いますが。
中川:であれば、解雇すればいいです。
   就業規則に書いてありますから。
社長:しかし、解雇は難しいのでしょう?
中川:とても難しいです。
社長:じゃあ、何もできないのですか?
中川:たとえば、仕事でミスをしたとします。
   それはAさんの能力不足かもしれません。
   能力不足では、懲戒処分はできませんが、ミスをしたことに
   ついて懲戒処分は可能です。
社長:そうですか。
中川:このようなことにならないように、試用期間中に本人の適性を
   見極めましょう。
社長:今後の戒めにします。
(中川コメント)
勤務成績不良・能力不足は個人の問題であり、服務規律とは関係がない
ので懲戒処分の対象とはなりません。
人事上の掲置として降職・降格、普通解雇の可否を模討することに
なります。
降職・降格、解雇は懲戒処分としても行われますが、懲戒と人事上の措置
とはまったく異なります。
例えば、セクハラを行った従業員を降格させることは懲戒ですが、被害者へ
の配慮から加害者を他部署に異動させることは人事上の措置となります。
懲戒と人事上の措置との遣いは、処分の効力にも影響しますので、
明確に区別して発令することが重要です。