【労務管理】転勤に関する雇用医管理のポイント

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【労務管理】転勤に関する雇用医管理のポイント
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■「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」の策定に向けて
厚生労働省は、この程、「転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)」の
策定に向けた研究会の報告書を取りまとめ公表しました。
この報告書は、「まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)」
(平成27年12月24日閣議決定)に基づき、企業の経営判断にも配慮しつつ、
労働者の仕事と家庭生活の両立に資する転勤に関する雇用管理の在り方を
整理したものです。
■転勤に関する雇用管理のポイント(仮称)の報告書概要
 労働者の仕事と家庭生活の両立に資する観点からの転勤に関
する雇用管理のポイント
 1.転勤に関する雇用管理について踏まえるべき法規範
 (1)配転命令権
   転勤を含む配置の変更は、労働契約上の職務内容・勤務
   地の決定権限(配転命令権)に基づき行われている。裁判 
   例では、就業規則に定めがあり、勤務地を限定する旨の
   合意がない場合には、企業が労働者の同意なしに勤務地
   の変更を伴う配置転換を命じることが広く認められて
   いるのが現状。なお、下級審では、労働者の育児や介護
   などの事情に対する配慮の状況等を判断に際して考慮
   する例もみられる。
  (2)転勤に関連するその他の法規範
   労働関係法令の中で、転勤に言及している規定として、
   育児・介護休業法第26条は、企業が就業場所の変更を
   伴う配置の変更をしようとする場合に、これにより育児
   や介護が困難となる男女労働者がいるときは、その育児
   や介護の状況に配慮することを規定している。
  男女雇用機会均等法第7条は、性別による間接差別を禁止し、
  間接差別となりうる措置を省令で列挙している。
  省令では、
   (ア)募集、採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を
     伴う配置の変更に応じられることを要件とすること
   (イ)昇進に当たって、異なる事業場間の配置の変更の経験
     があることを要件とすること
  が挙げられており、これらの措置は、合理的な理由がない
  限り、性別による間接差別となる。
   
 2.転勤に関する雇用管理を考える際の基本的な視点
  企業と労働者との間の雇用関係が継続的性質を持つことを
  踏まえれば、転勤については、企業としての成長や競争力の
  向上も当然念頭に置いた上で、その有無や態様について労働
  者がある程度の中長期的な見通しを持てること、また他方で
  は、労働者が就業を続ける中で遭遇するライフイベントなど
  の変化に対応できるものであることが望ましい。
  転勤に関する企業内の仕組みの設計や運用は、企業における
  人的資源管理の一環として集団的・組織的に行うことが要請
  されるが、同時に、可能な限り、個々の労働者の納得感を得
  られるようなものであることが望ましい。  
 3.転勤に関する雇用管理のポイント~現状把握
  転勤のあり方の見直し等を行おうとする場合には、その前提と
  して、まず自社における異動(転勤を含む)の現状を確認し検証
  することが必要であり、以下の事項が考えられる。
 (1)目的の確認
   企業が異動を行う目的には、適正配置、人材育成、昇進 
   管理、組織活性化など、様々な要素があり、各要素を峻
   別することが難しい場合もあると考えられるが、自社の
   通常の異動の目的が主にどのような要素を含むのか、再
   確認することが有効と考えられる。
  (2)異動の状況
      自社における異動の状況について、例えば以下の事項に
   着目して把握することが考えられる。
    ・自社組織における異動の状況:可能であれば異動の目
     的に含まれる上記(1)の要素ごとに、異動の規模、異動
     者の中の転勤者の割合、転勤をする可能性のある者と
     実際に転勤を経験する者の人数・割合等
    ・労働者からみた異動の状況:労働者の企業内のキャリ
     アにおける異動の時期(年齢層)・回数・期間・地理的
     範囲・本拠地の有無、単身赴任その他家族への影響の
     状況等
 (3)転勤に関する取扱いの状況
   自社における転勤の取扱いの状況について、例えば以下の
   事項を確認しておくことが考えられる。
    ・転勤の起案から決定までのプロセス及びその主体、
     労働者の事情や意向の把握方法
    ・転勤に付随して自社が負担している費用(赴任旅費、
     単身赴任手当、社宅費等)
    ・転勤と処遇(賃金、昇進・昇格)との関係
    ・転勤についての労働者の仕事と家庭生活の両立等に
     照らした課題
 (4)異動の目的・効果の検証
   自社において実際に異動が果たしている機能は上記(1)のうち
   いずれであるか、また、異動のうち転勤が果たしている機能は
   いずれであるかを検証することが有効と考えられる。
   例えば、上記のうち人材育成の要素については、労働者の職務
   遂行能力の向上において転勤が実際にどの程度貢献しているの
   か、客観的に検証することが有効と考えられる。
 以上を踏まえ、目的に照らした効果が得られているか、
 効果に見合った転勤となっているかについて、上記(3)
 で把握したコストも考慮しつつ検証することが有効と
 考えられる。