じいちゃんの傷リンゴ(ココロのメルマガ小説)
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労務管理に奇策なし!大企業20年、中小企業13年 人事労務畑一筋で
現場をはいずりまわった人事労務担当者が中小企業経営者のために語る
作者: 中川清徳 2014年4月12日号 VOL.1849
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マラソンのペースメーカーが完走するのはタブー
(続きは編集後記で)
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じいちゃんの傷リンゴ(ココロのメルマガ小説)
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◆ココロのメルマガ小説
『じいちゃんの傷リンゴ(ココロのメルマガ小説)』
「ありがとうよ、マサル」
「うん、いいよ」
「じいちゃんは身体だけが自慢だったけんど、去年くらいから腰が痛く
てな」
「ううん、どうせオレ暇だから...」
大矢マサルの家は農家だ、農家といってもなかなか専業で食べていけな
い。父親は、JAに勤めて保険の仕事をしている。
「高いところだけでも取ってくれると助かるわ、大事にな」
「わかっとるよ、じいちゃんの大切なリンゴだもんな」
マサルは幼い頃からスポーツが得意だった。身長は一七二センチ。けっし
て大きい方ではないが、足首のバネが強かった。そのおかげて、足が速くて、
小学校の運動会ではずっとリレーの選手だった。中学に入ると、陸上部に入
った。地区の記録会でずば抜けたタイムを出した。先生たちが慌てた。
「未来のオリンピック選手だ」と持ち上げた。年々、タイムは上がり、全国
大会でも短距離で上位入賞を競うようになった。そして、県で一番の実績を
誇る私立高校へ、特待生として入学した。しかし、その時がマサルのピーク
だった。
一年生の夏の大会で、いきなりアキレス腱を切った。右足の膝から下がパ
ンパンに腫れ、二ヶ月も歩行困難になった。整形外科医は、若いから早く治
ると言ってくれた。「早く治したい」。陸上部の仲間が駆けるのを、眩しく
見ていた。
その焦りが災いした。医者に「まだ早い」と言われていたのに、軽い慣ら
しのつもりでトラックを一周したとき、左膝に痛みが走った。皿が割れた。
無意識に、ケガの右足をかばったのが原因だった。再びの治療。そして、激
しいスポーツの禁止宣告。特待生をはずされ、「普通」の生徒となった。
そして、一年を待たずに、追われるように退学した。いや、追われたわけ
ではない。陸上だけが自慢だっただけに、マサルには居場所がない気がして
しまったのだった。
「マサル、そろそろ休もうか」
「いいよ、もうちょっと頑張ろう」
「いやいや、じいちゃんが休憩したいんだ。裏のクミちゃんのところから栗の
お饅頭をもらったろう」
クミちゃんとは、裏の和菓子屋の娘。マサルの中学の同級生だ。
「いいよ、一緒に食べようか」
「オレ、家からお茶持ってくるよ、今日は天気がいいから、ここで食べよう」
「そうじゃな」
そう言うと、マサルは首に巻いた手拭いで汗を拭き取り、母屋へ駆けた。
(クソッ)マサルは走るたびに思い出す。(クソッ!)しかし、その悪態は誰に
も見せたことはなかった。人前で、「クソッ」などと言ったら、惨めなのは自分
自身だとわかっていたからである。
「じいちゃん、箱ごと持ってきたよ」
「おお、ありがとう、ありがとう。クミちゃんとこの栗きんとんは美味いから
なぁ」
「うん...」。
マサルは祖父の勘治が好きだった。半年前に、高校を辞めた時、父親も母親も
引きとめた。父親は烈火の如く怒った。祖母は、オロオロして両親をとりなして
くれた。
「マサルだって辛いんだから、わかってあげなさいよ」と。その優しさが、よ
けいに辛かった。そんな中で、何も言わなかったのは、祖父だけだった。退学届
を出す前に、すでに学校へは行かなくなっていた。何もしなくて、家でブラブラ
していると、「よかったら手伝ってくれんかな」とマサルに声をかけた。
それ以来、ときどき手伝うのが日課になっている。
「なあ、じいちゃん。なんで、じいちゃんは怒らないんだよ」
「...」
「父さんなんか、今もチクチク皮肉ばかり言うのにさ」
「言ってほしいのか」
「ううん...」
「じいちゃんはな、別に学校を辞めてもかまわんと思うとる」
「え!?」
「だって、じいちゃんは大学へ行ってるじゃないか」
マサルは、勘治は頭がよくて若い頃は東京の大学へ行き、一時は東京で働いていたと
聞いていた。
「あのな、マサル。お前、ケガしたとき、どうだった」
「どうって...痛かったよ」
「うん、痛かったろう。痛いってことはな、痛い人の気持ちがわかるってことだから
な。それがわかっただけでいいじゃないか」
「そんなこと言ったって、オレ負け犬...」
「あのな、マサル。そのリンゴ取ってみい」と言い、勘治はリンゴの木の下枝を指差し
た。
「どれ?これ?」
「おお、それそれ」
マサルがそのリンゴをもいで手に取ると、勘治はこう言った。
「そこにな、小さな傷があるじゃろ」
見ると、そこには黒く凹んだ小さな点々が二つ付いていた。
「うん」
「その傷があるだけで、もう売りもんにはならん。それがマサルだな」
「え!」
マサルは言葉を失った。(売り物にならない...オレは傷物か...)
「じゃがな、面白いことがあるんじゃよ。傷がついたリンゴのほうが美味いんだな。傷
がつくとな、リンゴはその傷を治そうとする。それも、早く、早く治そうってな。す
るとな、なぜだかわからんがな、リンゴの糖度がグッと上がるんじゃ」
「...」
「見てくれだけ良いリンゴと、見てくれは悪いけど、中身は美味い。マサルはどっちの
リンゴを食べたいかな」
「...じいちゃん...ありがとう...。じいちゃん」
マサルは、涙を隠すようにして下を向き、傷ついたリンゴにかじり付いた。今まで食べ
たリンゴの中で、一番甘かった。
(プチ紳士からの手紙より引用)
(中川コメント)
...。
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編集後記
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マラソンのペースメーカーが完走するのはタブー
テレビでマラソン大会の中継を見ていると、スタートしてすぐ先頭に立
つランナーのゼッケンの色が他の選手と違うことがある。
これは大会の主催者に雇われたベースメーカーであることを示すゼッケ
ンで、今ではすっかり一般的なものになった。
彼らはブロのランナーで、出場選手に好タイムを出させるため、レース
全体のべースが落ちないように先頭に立ってレースを引っ張ることがその
役目だ。
毎年、3万人を超えるランナーが東京の街を駆け抜ける東京マラソンでも、
男女それぞれ数名のベースメーカーが工ントリーされている。
そんなべースメーカーは契約にもよるが、レースを完走したり、ましてや
1位でゴールするようなことがあってはならない。たいてい20~30キロメー
トル地点で走り終える契約になっているので、たとえ当日どれだけ調子がよ
かったとしても、完走することは契約違反に当たるのだ。
ベースメーカーがレースに登場し始めた頃には、ゼッケンを区別すること
もなく通常のランナーとしてエントリーされていたため、最後まで先頭を譲
らす優勝してしまったペースメーカーもいた。
そこで現在では、正式に出場している選手とは別の色のゼッケンをつけて、
ぺースメーカーであることがひと目でわかるようにしている。
(「あの業界のタブー」より 青春出版 発行)
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そのため、用語の使い方、表現の仕方等が不正確な場合があります。
むつかし法律条文をわかりやすく説明するために正確な表現を
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