【出向】給料が下がることが理由で出向を拒否する場合

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【出向】給料が下がることが理由で出向を拒否する場合
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中川:こんにちは。
社長:こんにちは。
   Aさんについて相談です。
中川:はい、なんでしょうか?
社長:Aさんを関連会社に出向させようと思っています。
   それで先日、内示しました。
   そしたら出向はいやだというのです。
中川:御社の就業規則はどうなっていますか?
社長:出向させることがあると書いてあります。
中川:出向を命じる根拠はありますね。
   Aさんはなぜいやだというのですか?
社長:関連会社では所定内労働時間が30時間増えます。
   それから給料が3万円下がります。
   それが拒否する理由です。
   
中川:関連会社は労働条件が御社より悪いのですね。
社長:そうです。
   他の会社に出向となるのですから、その程度は我慢してもらわないと。
中川:あのう、Aさんは出向後も御社の従業員ですよね?
社長:出向ですから、当たり前です。
中川:たしかに、出向させることが就業規則に書いてありますから
   出向させることはOKです。
   しかし、勤務時間が長くなりしかも給料まで下がるのです。
   そのようなことがあるのであれば、就業規則に書かないといけません。
社長:就業規則に労働時間や給料が悪くなることがあると、書けばいいの
   ですか?
中川:それを書いたとしても、最初から労働条件が不利になることを前提に
   するのはいかがなものかと思います。
社長:じゃあ、就業規則に書くべきでないと?
中川:書くべきではないでしょう。
社長:どうしたらいいですか?
中川:もし、Aさんが出向しても労働時間や給料が同じであれば
   就業規則にしたがって、出向を命じることができます。
   しかし、出向により不利益になるのですから、Aさんの同意が
   必要です。
社長:Aさんは拒否しています。
中川:であれば、他の従業員を出向させましょう。
社長:その人も出向を拒否するかもしれません。
中川:それは人情でしょう。
社長:しかし、出向させなければなりません。
中川:であれば、労働時間が長くなること、給料が下がることに
   ついて補償をすることです。
社長:そうですか。
   それであれば出向を強制できますか?
中川:はい。
(中川コメント)
本日の記事は阪神高速鉄道事件を参考にしました。
出向先での労働時聞が年間33時間増えること、出向前の賃金と比べて
出向後の賃金が3万円余り減少していることから、「このような不利益を
伴う出向に予め包括的に同意を与えていたとは、到底解釈することは
できない」という判決です。
出向させる場合は、原則として本人の同意を得るようにしましょう。