【解雇】なぜ解雇が難しいのか

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 【解雇】なぜ解雇が難しいのか
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中川:こんにちは。
社長:こんにちは。
   先日、ひょんなことから労働基準法を見ました。
中川:勉強されていますね。
社長:次の条文がありますね。
(解雇の予告)
第二十条  使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、
少くとも三十日前にその予告をしなければならない。
三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わな
ければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能と
なつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合におい
ては、この限りでない。
   解雇する場合は30日前に予告すれば良いと書いてあります。
   しかし、中川さんは解雇はできるだけしないようにと
   言っていますね。
   でも、法律では解雇は難しいからしないようにとは
   書いてありませんよ。
中川:確かに、労働基準法ではそのように書いてあります。
   30日分の賃金を払えば即座に解雇できるとあります。
社長:でしょう?
   どうして解雇は難しいのですか?
中川:裁判の結果です。
   経営の合理化や整理など会社の都合で過去する場合は
   働く人に責任がないので、解雇権を乱用していはいけないと
   いう判例が多くあり、それが定まったのです。
社長:どういうことですか?
中川:解雇するには次の条件に当てはまっているかが問われます。
   1.客観的に人員整理を行う業務上の必要性があるか
   2.他に整理解雇を回避する可能性はないか。
     また使用者による整理解雇回避の努力がなされたか
   3.整理解雇基準に合理性があるか。
     またその基準の適用に妥当性があるか
   4.解雇手続きに関して、労働組合等と誠意をもって協議
     したか。
     また労働者に誠意をもって十分に説明したか。
   これを整理解雇の4要件といいます。
社長:ふーん。
   ややこしいのですね。
   でも、、これは経営の合理化や整理のための解雇ですよね。
   そうではなく、協調性がない社員とか、仕事ができない社員が
   いるのです。
   そのような社員を解雇する場合は、整理解雇の4要件は関係ない
   でしょう?
中川:そうですね。
   しかし、整理解雇の4要件をベースに労働者保護の観点から、
   普通解雇(能力がないなど)であっても、
    1.客観的・合理的な理由がある
    2.社会通念上相当である
   の要件を満たさなければ、解雇はできないという判例が確立しました。
   これに基づき、労働契約法(労働基準法ではありません)でも
   明記されました。
   
社長:うーん。
   客観的・合理的な理由とは何ですか?
中川:たとえば、能力がないので解雇したいとします。
   能力がないことを証明できることが前提です。
   しかも、能力がないとしても、会社がどの程度、指導教育をしたかが
   問われます。
   それでも、期待した能力を発揮できない場合です。
   それを会社が証明しなければなりません。
社長:そこまで言われるのですか。
中川:そうです。
   だから、解雇は難しいのです。
社長:お金を払えば良いということではないのですね。
   分かりました。
(中川コメント)
労働基準法では30日分の解雇予告手当を払えば、即時解雇できると
書いてあるのに、裁判所が解雇を容易に認めない理由があります。
それは、昭和30年から40年にかけて確立した
1.終身雇用制
2.年功序列制
にあります。
これらは長期雇用を前提としています。
社員教育や人事異動を通じて、社内キャリアを身につけさせ、
それに応じた仕事を与え、賃金を払う仕組みです。
このような前提があるので、特別な事情がない限り、解雇はできないと
いう法理ができあがったのです。
うちは中小企業だから、
1.終身雇用制
2.年功序列制
は関係ないと言いたいと思いますが、現在はあきらめてください。
働き方が変わって、外国のように
1.終身雇用制
2.年功序列制
がなくなれば裁判所は考えを変えてくるかもしれませんが、
当分は考えられません。
安易に解雇しないことです。
安易な解雇をすると訴訟で負けます。