【試用期間】勤務態度不良、能力不足のため解雇したい

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【試用期間】勤務態度不良、能力不足のため解雇したい
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中川:こんにちは。
院長:こんにちは。
   Aさんは3ヶ月の試用期間中です。
   しかし、ミスが多いのです。
   病院なのでミスは見逃せません。
   それで解雇したいのですが、問題ありますか?
中川:ミスをなくするように指導をしましたか?
院長:直属の上司が指導しています。
   採用して1ヶ月後の面接でミスを減らすように改めて
   指導しました。
中川:その結果どうなりましたか?
院長:ミスは減りました。
   しかし、仕事を覚えようとしないのです。
   パート従業員から、不満が出ています。
   それに仕事が遅いです。
中川:それは困ったものですね。
院長:上司の2回目の面接の時に、
   ・仕事を覚える努力をすること
   ・パートから不満が寄せられている
   ・仕事が遅い
   と、指摘しました。
中川:当然のことですね。
院長:Aさんは、「そんな評価をされたら頑張れない、クビということ
   か」などと言いました。
   さらに、退職届の用紙はあるのかと質問があったので
   書式はないので、任意の書式で出せばいいと伝えました。
中川:そうですか。
院長:そうしたら労働組合(院内)に加入して、退職を強要されたと
   言うのです。
   労働組合と協議の結果、Aさんを引き続き雇用することに
   しました。
中川:その時期はいつですか?
院長:Aさんを採用したのが2月1日です。
   労働組合と協議をしたのが3月26日です。
中川:まだ、試用期間中ですね。
院長:そうです。
   組合と協議した翌日にAさんは具合が悪くなったとのことで
   欠勤しました。
   そして、4月3日に「退職脅迫により体調不良となった」として
   休職届を郵送してきました。
   だんだん腹が立ってきました。
   試用期間中なので解雇したいのです。
   問題ありませんか?
中川:試用期間は4月末までですね。
   試用期間中でも合理的な理由があれば解雇できます。
   今回の場合は解雇ができるかもしれませんが、裁判になると
   敗訴する可能性があります。
院長:どうしてですか?
中川:体調不良であれば、医師等の診断を提出させましょう。
   その原因が病院にあると主張するでしょうから、上司の対応が
   脅迫に当たるかどうかをAさんと話し合いましょう。
   また、試用期間はに本人の能力等を見極めることが趣旨です。
   まだ、4月末まで期間がありますので、今解雇するのは早すぎると
   指摘される可能性があります。
院長:そうですか。
中川:それから、Aさんの勤務態度や指導記録は書面で残しましょう。
   試用期間が終了して解雇するとしても、労働組合の申し出や
   訴訟などに備えましょう。
院長:わかりました。
(中川コメント)
本日の記事は、医療法人健和会事件(平成21年10月15日東京地裁判決)を
参考にしました。
試用期間の終了までに20日残っているので、解雇の判断をするのは
早すぎるとして、解雇を無効となり、病院が敗訴しました。
試用期間中であれば、正社員よりは解雇しやすいのですが、最近の
判例を見ると解雇の合理的な理由を厳しく求める傾向にあります。
試用期間中といえども安易な解雇は止めましょう。
なお、休職届をAさんが郵送していますが、休職は本人が判断するものでは
ありません。この病院の就業規則は甘いと思われます。