【残業代】歩合給を払えば残業代は不要か?

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 【残業代】歩合給を払えば残業代は不要か?
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中川:こんにちは。
社長:こんにちは。
   頑張れば報われる歩合給を導入したいと思っています。
   そこで質問ですが、歩合給を払えば残業代は払わなくても
   いいのですか?
中川:社長はどう思いますか?
社長:残業をするかどうかは本人次第だと思います。
   残業をして営業をすればその分歩合給が増えますから。
   だから歩合給に残業代が含まれているので残業代は
   払わなくても良いと思います。
中川:ブーです。
   歩合給も一種の手当です。
   たとえば役職手当や資格手当などと同じように。
社長:手当といえば手当ですが、役職手当や資格手当は
   頑張っても金額に変化はありません。
   歩合給は月々変化します。
   歩合給は性格が違うと思いますが。
中川:精勤手当を支給されていますね?
社長:はい。
中川:精勤手当は遅刻をしたり欠勤すると減額になったり
   場合によってはゼロになりますね?
社長:あれ!
   たしかに。
中川:精勤手当は残業手当の割増賃金に算入していますよね?
   減ったら減った金額で残業手当を計算するでしょう?
社長:たしかに。
中川:気がついたでしょう?
   歩合給も増えたり減ったりします。
   だから歩合給も精勤手当と一緒で残業手当の
   対象となります。
社長:では、会社は損をしますね。
中川:単純に損をするとは限りません。
   歩合給があることによって頑張ってくれれば
   業績が向上することもあるでしょう?
社長:ふーん。
   歩合給の設定が難しいですね。
中川:そこが経営者の腕の見せどころです。
社長:ところで残業代はどのような計算をするのですか?
   歩合給が多い社員の残業代がとても高くなるのではと
   心配です。
中川:たしかに。
   しかし、歩合給は特殊な計算をします。
社長:へえ、難しいのですね。
中川:たとえば17万円(残業代対象の分、ただし歩合給を除く)の
   給料だったとします。
   社長の会社の1ヶ月の所定労働時間は170時間です。
   したがって、
   この人の時間単価は1000円(17万円÷170時間)となります。
   この人の残業単価はいくらですか?
社長:えーと、残業代は1.25倍ですから1250円(1000円×1.25)ですね。
中川:たとえば30時間の残業をしたとしたら残業代はいくらですか?
社長:えーと、1250円×30時間=37,500円ですね。
中川:そうですね。
   以上が普通の残業計算です。
   それに歩合給の残業計算をします。
社長:はあ?
   さっき、残業代を計算したではないですか?
   なんで、歩合給をまた計算するのですか?
中川:17万円には歩合給は入っていません。
   歩合給も割増賃金の対象になります。
社長:なんだかいやになりましたね。
中川:まあ、そういわずに。
   で、歩合給が3万円だったとしますね。
   その場合の割増賃金は
   3万円÷200時間(170時間+30時間)×30時間×0.25
   =1,125円です。
   ということで今月の残業手当は
   37,500円+1,125円=38,625円となります。
社長:あのう、その計算は間違っていますよ。
中川:どこがですか?
社長:割増賃金は0.25ではなく1.25でしょう?
中川:普通の割増賃金はその計算をしますが
   歩合給の場合は0.25でいいのです。
   それと、その月の全労働時間(所定内時間+残業時間)で
   1時間当たり単価を計算します。
社長:なぜですか?
中川:30時間分残業をしたとしたら
   その部分は労働の成果として支払われるので
   すでに支払い済みと考えられるところから
   0.25でいいのです。
社長:ふーん、なんだか得をしたような。
   でも、残業手当の他に払わなければならないので
   あれば損をしているような...。
中川:そうですね。
   要するに歩合給を支給したとしても
   残業の支払はしなければなりません。
   それを承知の上でどうするか経営判断をする
   ことになります。
社長:なるほど。
   研究してみます。
(中川コメント)
歩合給に対する割増賃金は休日出勤の日は0.35倍となります。